日記

人類学、社会学、哲学、写真、カメラ、虫、魚、旅行など。ごちゃまぜです。

カイロ2日目(1/24) 日記

早朝、部屋からポルトガル人の団体が出ていく音で起きた。

8時頃までだらだらして、朝食を食べた。内容はエジプトパンと両面焼きの目玉焼き、サラダなどだった。メニューが滞在中ずっと同じだったのは残念だったが、ステイの値段を考えれば不満もなかった。

観光するかと思いホステルを出た瞬間、土産物屋の主人に話しかけられた。無視して通り過ぎてもいいが、ホステルからあまりにも近いので毎回無視して行くのも面倒だと思い入店。日本にビジネスで何度行ったとか、先週困ってるイギリス人を助けたとか、店主の嘘か本当かわからない与太話を聞く。

コシャリを食わしてやるというので3時にまた来ると約束して退店。Uberスクーターを使い、近くのイブン・トゥールーン・モスクを見に行った。特に有名な観光地でもないが、ネットで見た写真が良い感じだったからだ。

9世紀にトゥールーン朝のイブン・トゥールーンが建てた歴史あるモスクらしい。トゥールーン朝はファーティマ朝ができる前に数十年だけエジプトにあった王朝で、世界史の用語集には載っていた記憶がある。

観光客もあまり来ないのでカイロの喧騒の中にありながら静謐な雰囲気で、とても気に入った。

モスクを出て、周辺を適当に散歩した。ムハンマド・アリーが建てたムハンマド・アリー・モスクも見ようかと思ったが遠くから見て満足。

尖塔があるのがモスクで、手前にあるのはサラディンが建てた要塞(シタデル)だ。

一般の人が英語を全然理解しないので驚いた。イギリスの支配が長かったのでインド並とはいかずとも、都市部ではある程度浸透してるのかと思ってたが、全然そんなことはなかった。複数の言語・民族が群雄割拠するインドやサハラ以南のアフリカと違いアラビア語一強だから、必要もないのかもしれない。

露店商やバスの運転手などだと数の数え方とか基本の時点で通じないことが多かった。英語を喋ろうともしてくれないので、片言のアラビア語で言い分を伝えるしかなかった。

一般的な話として、英語が通じない層とは言語以前に文化的背景が違いすぎるので、コミュニケーションを取るのはそう容易いことではない。
ジュースを飲むのに軒下を貸してくれた人とGoogle翻訳で会話を試みたら、イスラム教の良さを延々と説かれた。

人類学者はこういう不毛なやり取りを乗り越えて学問的に価値のある情報を引き出すんだから本当にすごい。

土産物屋でコシャリを食べた。米、パスタ、マカロニ、ひよこ豆などを混ぜた、エジプトでポピュラーな料理だ。炭水化物の多さが尋常ではないけどおいしい。

コシャリは土産物屋の主人が奢ってくれた。あとでデカい買い物をさせる魂胆だろうと思いつつお礼を言って退店。

夕方、マッチングアプリで知り合った大学生とニューカイロのモールでお茶をした。アニメオタクだったので日本のアニメの話をしたり、他にもエジプト社会のことなど色々教えてもらった。一番好きなアニメはバイオレット・エヴァーガーデンだと言っていたから、並のオタクではないと思う。旅行前にチャットをしてた時、最近チェーンソーマンを見たと言っていたので、アニメイトで買っていったマキマさんのキーホルダーをあげた。

英語は僕などより流暢で、英語での教育がメインの私立学校で長らく教育を受けたと言っていた。私立と公立では教育の内容・質大きな違いがあり、進路も全然違うそうだ。指定校推薦程度でやんや言われる日本の教育はまだ均質なほうだなとつくづく思う。

話し言葉のエジプトアラビア語は話せるが、正則アラビア語(フスハー)は苦手で、高校では単位を落としたと言っていた。アニメも英語字幕で見るそうで、アラビア語の字幕を追いかけるのは大変らしい。

韓国ドラマなどにもやたらと詳しく、Netflixでも入ってるのかと聞くと、全部ネットに転がってるものを見ているということだった。ネットで何でも見れる環境はコンテンツ製作者には地獄だが、社会共通の文化資本としての機能は侮りがたいものがある。

イカゲームはエジプトでも大流行りらしい。

ニューカイロは砂漠のど真ん中にあるので夜はやたらと寒かった。カイロの人口増加や交通渋滞を緩和するために建設された都市で、巨大なショッピングモールが立ち並び、首都機能も一部移転されている。観光客としては特に見るべきものはないが、ニュースで話題の場所を見ることができて良かった。

10時頃解散し、ホステルに帰って寝た。

小林正樹監督『切腹』感想

変なメガネの人の集団自決発言も話題なことだし、かねてから気になっていた小林正樹監督の『切腹』を観た。一言でいうと、士官先と家族を失い無敵の人になった浪人(仲代達矢演)が、娘婿を切腹に追いやった井伊家に復讐を企てる映画、ということになろうか。

最後まで見てまとめるとそういう復讐譚ということになるのだが、それより重要なテーマは、下っ端を理不尽な死に追いやり、かつ体面を保とうとする武士の精神へのアンチテーゼらしい。こういうのは、戦後高度経済成長期の社会派ヒューマニズム映画でたまにある。具体的な題材は、本作品のように武家社会だったり、日本軍だったりする。

切腹やらを考える上で私が一番関心があるのは、実際にそれがどんなものだったかというよりは、そこに現代に生きる人間が何を投影し、見ようとするのかということである。戦後左翼知識人が前近代日本のこの因習に見出したのは、弱者に責任を負わせ、家やら公儀やらを保とうとする日本社会の本質とやらであった。多分彼らは現代日本社会にもそうした前近代の残滓をみとめ、提起したのである。そこに、自らとは異なるものをまなざそうとする西洋社会のオリエンタリズムが重なり、問題は複雑になっている。この『切腹』とか今井正の『武士道残酷物語』とかが国際的にというか西洋映画市場で高い評価を受けたことと、件の「集団自決」発言がNYTで滑稽なほど大きく報じられらことと、1ミリくらいは関係があると思う。

ところで、こういう社会派ヒューマニズム映画を作る人たちは、純粋に悲惨な境遇に共感して描写しているのか、それともそこにサディスティックに欲情しているのか、よくわからないところがある。実際、『切腹』においても物語序盤の「切腹」描写は白黒ながら凄まじい(真剣ではなく竹光で切腹する)し、その残酷さや切腹までの彼の悲惨な境遇が、終盤の主人公による復讐を爽快なものにしてもいる。これは映画に限らず、普段目にする事件とか事故の社会部的な報道でもそうだ。例えば凄惨な暴力事件の記事は、記者としても取材に力を入れるだろうし、ウェブ媒体でのPV数も伸びるはずだ。別にそれが悪いと思うわけではない(製作者が完全な正義漢ヅラしていたら冷笑の一つもしたくなるかもしれないが)。ただヒューマニズムやら被害者への共感やらからはみ出る被虐心が、何となく愛おしく、もっと知りたいと思うだけである。

カイロ1日目(1/23) 日記

仮にもものを書く仕事をしようと考えているので、考えたことや体験したことをレポート以外で形にできるようにならなくては、と思っているのだが、あまりうまくいったことがない。今回もいつまで続くかはわからないが、日記形式で重く考えずに書こうと思う。写真はまた後日で。

前日23:30(日本)
フランクフルトへのフライト。フランクフルトの天候不良で飛行機が来なかったとかで、予定より10時間とか遅れた。ドイツでうっかりホルストヴェッセルリートを口ずさんでしまわないか緊張した。中学の時に聞いて以来耳に残って離れないのだ。

6:00
フランクフルト着。遅れのせいで1泊することはできなかったが、13時のカイロ行きのフライトには少し余裕があったので、一時入国して市内に出ることに。店も空いてないので特にどこも行かなかったが、フランクフルト中央駅の駅舎とその周辺を散歩した。
スモーカーが存外多く、駅の外で歩きタバコをする人が目立った。屋外にある駅のホームにも灰皿が置いてあった。
駅出てすぐ東横インがあった。

13:00
フランクフルト発
空港でサンドイッチとヴルストを買った。バリ出身だという店員が良くしてくれて、おまけでバゲットをくれた。しかし物価が高い…。日本で100円ちょいのものが3ユーロはかかった。
飛行機でエジプトアラビア語の勉強をした。ニューエクスプレスの教科書を読んでると、エジプト出身でカナダ在住だというおじいちゃんが話かけてきた。エジプトのアーンミーヤ(口語)は基本的な単語がフスハー(古典語、文語)と全然違うんですねというと、アーンミーヤは地域の言語に影響を受けているから全然違うと教えてくれた。エジプトの場合はフランス語、コプト語トルコ語の影響が大きいと言っていた。どの表現が該当するのか、今度誰かに聞いてみたい。
おじいちゃんは瓶ビールを飲んで爆睡し、CAさんに心配されていた。
ルフトハンザの機内食は刻んだパプリカとかの野菜を刻んだのとチーズのサンドイッチで、あんまりおいしくはなかった。ベジタリアンに配慮されてたりするんだろうか。

21時
カイロ着。ビザの発給、両替、simの購入など諸々やって疲れた。ユースホステルまではバスでも行けないことはなさそうだったが、日本出て以来まともに寝ておらず疲れたのでタクシーで行くことに。ふっかけてくる運転手が大勢いた。空港内の時点で、スーツを着て髪を固めた胡散臭いビジネスマンふうの男がタクシーを紹介すると言ってきて、ダウンタウンまで25米ドルだと言った。すぐ断ったが、20キロ以上あるので先進諸国での料金を考えれば、案外良心的だったかもしれない。マニラでその倍近く取られたのは苦い思い出だ。
空港を出るとすぐ、何人もの運転手に話しかけられた。調べた限り相場は100エジプトポンド(1EGP=4.4円くらい)以下ぽかったが、だいたいどの人も400EGPくらいふっかけてきた。警察や清掃員にまともなタクシーがどこでつかまるか聞いたが、あんまり答えたくなさそうだった。多分運転手たちとの関係があるのだろう。
少し歩くと空港公認のタクシーが止まっていたが、値段は同じようなものだった。今の日本は貧乏な国だとか、自分は貧しいバックパッカーだから70EGPしか払えないとか言ったが、それでも250EGPより先には一歩も引かなかった。いい加減疲れたので、220EGPで乗せてもらうことに。相手は生活かかってるのに1000円ごときでうだうだ言って申し訳ないという気持ちにもなるが、町の物価を考えればこの人らはそれなりの暮らしをしてるのかもしれないとも思う。
運転はめちゃくちゃ荒く、レーンなどないかのように縦横無尽に走っていた。ウィンカーなど出さないし、車間距離もやばい。何より、左ハンドルだから助手席に座ると自分が運転しているような感覚になるのがスリリングだった。タクシーを運転していて事故ったことはあるかと聞くと、あるし、自分も客も怪我をしたと言っていた。アラビア語混じりでよくわからなかったが、何も問題はなかったという(どこが?)

翌1:00
ユースホステルにチェックイン。1泊1300円くらい。ポルトガルから来た集団がいた。東京だか京都だかは王の都という意味なんだろと聞かれたが、京都ってそういう意味あるんだろうか。よく知らないけどと前置きしたうえで、京都は単に都という意味で東京は東の都という意味だと言った。
街路には犬はおらず、猫があちこちにいた。ねずみはいたがゴキブリはまだ見ていない。夜遅くまで道端で水たばこを吸っている人達がおり、風情がある。
客室のドアがめちゃくちゃ固く、ガチャガチャやっていたら中から女の人が出てきてびっくりした。エジプト人、他のアラブ人はダメだが、男女同室なのだそうだ。

久々のモノクロ

去年から撮りためてたフィルムをやっと現像に出した。

 

モノクロを大学で現像できないので最近はカラーネガばっかり使っていたが、1年ぶりくらいにモノクロ(TMAX400)を使ってちょっと感動したのでとりあえずそれだけ載せたい。

 

機材はзоркий-4 + Voigtländer super wide-heliar 15mm f4.5

 

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猪苗代湖。雲の粒状感が久々で嬉しい。

 

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禍々しい気配をまとったはくちょう丸。

 

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鶴ヶ城(記念写真ですねすみません)

 

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 横須賀の立石公園。2つ目、トリミングしてシャドウトーンをどうにかすればなんかいい感じになりそう。

 

f:id:E_javanica:20210417004256p:plain国立の谷保天満宮。鶏の影の形がなんかおもしろい。

 

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丹沢の鍋割山の山頂。名物の鍋焼きうどんがおいしい。 最近高校時代にたまにやってた登山を再びやりだして、塔ノ岳にも上りました。道に慣れたら夜中に登って星とか朝日も撮りたいもんです。丹沢はどこも標高のわりに登山口との標高差が大きいので三脚とかを持って登るのはなかなかしんどいですが。

 

フィルム代+現像代で3000円くらいしましたが、たまにはいいですね。早く大学の暗室とスキャナーが使えるようになるといいんですが。次は冷蔵庫で2年くらい眠ってるdelta100を使おうかな。

 

今回使った15mmみたいな超広角を生かすのははやっぱり難しくて、写真としては35~50mmくらいの画角にトリミングした方がよさげなのばっかりですね。今回はそのままで載せましたが。外付けファインダーの中に被写体を配置するのが楽しいんだけど、でも結局別に標準レンズでよかったっていうことが多い気がする。

 

とはいえ、トリミングすればいいわけで。スナップのプロにはぶち殺されそうだけど、高画質フィルムを使うメリットって「そこそこトリミングしても大丈夫」っていうのもありそう。ていうか超広角のスナップ用レンズが多いのってそれ前提だったりするんだろうか。

 

スナップだったら標準域のレンズで決定的瞬間を撮るのがかっこいいイメージがありますけどね。ブレッソンみたいに。

 

なんかだらだら書いてしまった。終わりです。

 

Princisia vanwaerebekiを標本に

そこそこ大きいPrincisia vanwaerebekiの雄が死んでいた。他にも瀕死の雄が数匹いたのでケージが蒸れたのかもしれない。デジケースは蓋の穴が小さいので気温が上がったときに蓋をしたままにしておくとめったなことでは死なないゴキブリでも命取りになるのだ。かわいそうなことをしました。


測ってみると7cm強あった。立派な個体だし、体内が腐敗する前に発見できたので、標本にすることに。


防腐のために腹部にエタノールを注射したが、十分かどうか不安なので一度エタノールにぶち込むことに。毒ビンなんか使ったの何年ぶりだろう。


供物兼香り付け(?)にブランデーをちょっと入れてやります。


展足。ゴキブリのはやったことがなかった。甲虫と脚の付き方が微妙に違うのでとまどう。


こんなもんでしょう。知らんけど。


Blaberus cranifiier♂とツーショ。


せっかくなのでラベルも付けた。採集地も種名も書かなくていいし、戒名でも付けてやりましょう。

御器 囓利(ごき かぶり)居士。

合掌。



Twitterでシェアする時用の写真。

河津桜

父と河津町河津桜の並木を見に行ってきた。

 

以前近くを通った際にチラ見したことはあったが、ちゃんと立ち寄ったのは初めてだ。

 

デジタルの撮影はFUJI X-T3+юпитер-8で。もっぱらこのレンズばっかり使ってるが、周辺部の描写がオールドレンズとしてもアレなのでそろそろM42用のアダプターを買ってタクマ―とかも使いたい。

 

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河津川沿いに約3キロにもわたって並木が続いており、けっこう見ごたえがあった。3月上旬までが見ごろだそう。

 

桃の花みたいな色の花で、ソメイヨシノより華やかな感じだ。個人的にはこっちの方が好きかもしれない。

 

 

 

枚数的に物足りないので、今月のはじめに横須賀の立石公園に行った際の写真もここに載せちゃおうと思う。

 

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富士山が見えると浮世絵でおなじみの景色が楽しめるのだが、曇ってて見えず。

 

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富士山は諦めて波打ち際を撮影。

 

立石公園も河津桜もフィルムで撮った分もあるので現像に出したらまとめて載せようと思う。河津桜はこないだニコイチして作ったキエフで何枚か試し撮りしたので、結果が楽しみだ。モルトを貼らなかったのでたぶん光漏れしてるだろうが。

 

河津町河津桜の詳細

www.kawazu-onsen.com

キエフの修理

部品取り用にebayで買ったキエフが届いたので、さっそく分解して以前買ったジャンクのノーネームキエフに合体させることにした。

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いちおう完動品として売ってたのを買ったけど、ヘリコイドは固着してほとんど動かないし、そもそもスプールが付いていなかった。バルナックライカと同じでキエフコンタックスもスプールがないと全く使いものにならないのだ。今回はいらないけどちょっと酷い気がする。

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シャッターユニットを分解すると取り返しのつかないことになりうるのでシャッターユニットごと移植。ユニット化されてるって素晴らしい。

と思ったもののノーネーム側のシャッターユニットカバーのねじがどれも固着してすぐには取れそうにないことがわかったので、逆に新しく買った方の本体にノーネームの前板と軍艦部などを取り付けることに。

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ヘリコイドは固着しているのでノーネームのをマウントごと移植。

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なんちゃってノーネームキエフの完成。

完動美品とはいかないけど、市場価値は2つの合計の5倍くらいにはなった気がする。元に戻さずに売るのは抵抗があるし、ふつうに自分で使う予定だけど。